原田マハ(講談社文庫)
年齢なんて関係ない、と強く思う一方で、女性の人生を語る上で年齢は切り離せない、とも思う。
仕事が、プライベートが、夫が、子どもが、恋人が、親が、心が、身体が、で始まる内容とそれを語る女性の年齢とは、だいたい相関関係がないだろうか。
本書は30~40代の女性が主人公の中編集。
それまですでにいくつかの壁を乗り越えてきた彼女たちが新たな局面を迎えたとき、どうやって一歩を踏み出すのか。
その存在を忘れていた、もしくは忘れたふりをしていた昔の傷が、疼いたり、えぐられたりして、読んでいて少し痛かった。
でも私は、こういう肌触りのよくない小説もときどき読みたくなります。
街中で可愛い女の子を見つける。道路工事で深い穴を掘っている現場に出くわす。路地裏に廃墟を発見する。高層ビルの屋上に立つ。そんなとき、オニヤンマをみつけた少年のように、青柳の心がたちまち飛んでいくのが見える。そんな場面に、何度出くわしたことだろう。咲子はいつもあきれて傍観するばかりだ。
少年とは、いい大人の男の別称である。(「夏を喪くす」より)
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